大学受験生が避けてはとおれない「暗記」について

人間は忘れる生き物。だから、

受験において、暗記は欠かせません。

しかし、「何回勉強しても覚えられない」「効率的な暗記方法を知りたい」という悩みを抱える人は後を立ちません。

ですので今回は、暗記の仕組みを解説し、おすすめの暗記方法や教科別のテクニックをご紹介します。

「暗記」とは?

そもそも、「暗記」とは何でしょう?

内容を理解せずに、対象そのものを丸暗記するイメージもありますが、辞書では「文字や数字などを見ないでもスムーズに言えるように、よく覚えること」と説明されています(出典:デジタル大辞泉)。つまり、「見ずにアウトプットできるほど、物事を覚えること」を指すのです。

受験勉強においての暗記は、まさにそれです。

特に理科や社会など、多くの情報を覚える必要がある科目は「暗記科目」と呼ばれていますよね。

しかし、人間は本来、忘れる生き物です。

意識的に暗記しなければ覚えられないため、暗記を苦痛に感じる人もたくさんいることでしょう。

暗記の基礎知識

暗記の効率を高めるためには、記憶のメカニズムについて理解することが重要です。以下では、脳の働きを考慮しながら、記憶のメカニズムについて説明します。

短期記憶と長期記憶とは?

人間の記憶には、短期記憶と長期記憶の2種類があります。

短期記憶は、一時的に情報を覚えること。その場で情報を利用する際に働きます。例えば本を読むとき、前の文章の内容を覚えていることで次の文章が理解できます。短期記憶が機能しないと、文章を理解し続けることが難しくなります。

ただし、短期記憶には保持できる情報の個数に制限があり、覚えていられる時間も数分程度です。したがって、試験前日に一晩勉強するだけでは、短期記憶に頼って覚えた情報は数分で忘れられてしまい、試験の役には立ちません。

一方、長期記憶は文字通り情報を長期間覚えておくための記憶です。

たとえば、小学生の頃に覚えた九九の表は、大人になっても多くの人が覚えています。これは、長期記憶として覚えているからです。

長期記憶には情報量や保持時間の制限がなく、効果的な暗記をするためには、短期記憶の情報を長期記憶に移すような学習方法が重要です。

情報は必要性によって記憶に定着する

情報が記憶に定着するまでには、3つの段階があります。まず、視覚や聴覚などの五感から入ってきた情報は、一時的に脳の「海馬」と呼ばれる部分に保存されます。その後、生きるために必要な情報だと判断されたものは、大脳皮質に蓄積されていきます。そして、蓄積された情報は再び海馬によって取り出され、思い出すプロセスを経て記憶として定着するのです。

ただし、すべての学んだことを覚えてしまうと、膨大な情報になり、脳の機能が低下してしまいます。そのため、学んだ情報は生活に必要なものに絞って記憶され、他の情報は徐々に忘れられます。これを防ぐためには、情報を繰り返し学習する必要があります。海馬は、脳に何度も送られた情報を重要なものと認識し、記憶として定着させようとします。

したがって、効率的な暗記をするためには、繰り返し復習することで脳に「生活に必要な情報」だと認識させることが重要です。

エピソード記憶と意味記憶の違い

先ほど説明した長期記憶は、「宣言的記憶」と「手続き的記憶」に分類されます。

「宣言的記憶」は事実やエピソードに基づいて情報を覚える記憶であり、「手続き的記憶」は行動や手順を身体で覚える記憶です。暗記は宣言的記憶の一部ですが、宣言的記憶はさらに「エピソード記憶」と「意味記憶」に分けられます。

エピソード記憶は、自分が経験した出来事や映画のストーリーなど、情報同士につながりがあるものです。情報がつながりを持つことで、覚えやすくなります。そのため、エピソード記憶で覚えた情報は脳に定着しやすい特徴があります。一方、意味記憶は単語や年号など、個別の知識を覚えるもので、エピソード記憶に比べて忘れやすくなります。

暗記力を高めるためには、最初は意味記憶で知識を学びながら、それぞれの情報を関連付けてエピソード記憶として積み重ねることが重要です。

記憶は睡眠中に形成される

日中に頭に入ってくる情報は膨大なため、その場で完全に記憶に定着することはありません。実際には、睡眠中に情報が整理され、記憶として定着するのです。したがって、暗記力を高めるためには、質の高い睡眠が欠かせません。人間の睡眠は、主に「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」という2つの状態に分かれています。これらの睡眠を適切に活用することが重要です。

ノンレム睡眠中は、脳内で情報の整理や取捨選択が行われます。脳は適切な情報を保持し、不要な情報を削除することで、記憶の整理を行っています。一方、レム睡眠中は、脳内の情報を関連付けたり、必要なときに引き出しやすくするための整理を行います。

睡眠のサイクルは個人差がありますが、約90分間隔でノンレム睡眠とレム睡眠が交互に繰り返されます。このサイクルを4〜5回繰り返すことで、脳の働きが活性化し、記憶の定着が促進されると考えられています。

一夜漬けや徹夜での勉強は、睡眠不足につながり、記憶の定着や情報整理が妨げられます。むしろ、十分な睡眠を確保した上で、ゆっくりと学習を行う方が効率的です。暗記の精度を高めるためにも、健康的な生活習慣と睡眠習慣を身につけることが重要です。

その暗記、本当に必要?効率のよい暗記術とは

受験生にとって、暗記は勉強の効率を高める重要な要素ですが、本当に全ての情報を暗記する必要があるのでしょうか?ここでは、暗記するべき物事の選択について解説し、効率のよい暗記術を紹介します。

全ての情報を暗記することは難しい

暗記するといっても、受験では1つの科目だけを勉強すればよいわけではなく、要求される知識量は膨大です。そのため、受験に必要な知識をすべて暗記することは不可能です。全てを覚えようとすると挫折する可能性もあります。

実は、暗記の質を高めるためには「暗記量を減らす」という観点が重要です。暗記する量が多すぎる場合は、覚えるべき内容を減らすことを考えてみましょう。暗記量を最小限に抑えることで、忘れにくい記憶を形成できます。

その解答、テスト中に導き出せない?

勉強する中で、暗記していなくても使える知識は多く存在します。たとえば、数学の公式を覚えていなくても自分で導き出せる場合がありますし、漢字の意味や構造も部首や読みから推測できます。英単語も接頭辞や接尾辞から思い出すことができます。これらはテスト中に推測して答えを導き出せる知識であり、覚えなくてもよいものがたくさんあります。

テスト中に思考して活用できる知識は、深い理解があることを示し、結果的に暗記力向上につながります。覚えなくてもよいものと、覚えるべきものを区別して考えることが重要です。

暗記するしかないものだけを暗記しよう

暗記するとき、教科書や問題集の内容をすべて覚えようとすることがありますが、それでは時間と労力がかかりすぎます。先述したように、暗記の精度を高めるためには、「暗記するものを減らす」という視点を持つことが重要です。

暗記量を減らすためには、まず暗記が必要な範囲を明確にし、覚えなくてもよい情報を見極めましょう。先に述べたような、思考によって導き出せる知識が対象です。そうすることで、覚えるべき内容が明確になり、効果的に暗記に取り組むことができます。

また、「覚えなくてもよいもの」を自分で考えていつでも導き出せるようにすることで、暗記量を減らすことができます。これにより、勉強時の脳の負担を軽減することができます。

暗記は受験勉強において重要な要素ですが、全ての情報を暗記する必要はありません。効率のよい暗記術を活用し、暗記量を減らすことで、より効果的な学習が可能になります。

暗記の基本テクニック

暗記を苦手とする人は多くいますが、暗記する際は、いくつかのテクニックを試してみるとよいでしょう。ここでは、暗記の基本テクニックを紹介します。

反復学習が暗記の基本

どんな情報も、1回で全てを覚えることはほぼ不可能です。1回にまとめて覚えようとするのではなく、何度も繰り返して、少しずつ頭の中に情報を蓄積していきましょう。同じことを何度も繰り返すことで、記憶が定着しやすくなります。忘れかけた頃に復習することを意識すると効果的です。

知識はアウトプットする

知識を暗記するには、定期的にアウトプットすることも重要です。知識は使われることで記憶に残ります。アウトプットの方法としては、学んだことを書き出したり、声に出して読んだりすることが有効です。文章を書く、友達に解説する、問題集や試験で書くこともアウトプットの一つです。

失点こそが暗記のチャンス

試験で答えを思い出せずに失点することは、暗記のチャンスです。試験に出る内容は他の試験でも出題されやすいため、自分が分かっていないところを洗い出すことができます。失敗したところを復習し、理解することで暗記力が向上します。

暗記のためのノート活用

暗記用のノートを活用することで、頭の中を整理しながら勉強に取り組めます。以下、3種類のノート活用方法を紹介します。

意味を持たせて覚えるマインドマップノート

マインドマップを使うと、情報を視覚化しやすくなります。用紙の中央にテーマを書き、放射状に連想できる知識や情報を書き出していきましょう。それぞれの知識がつながりを持つようにすると、暗記がしやすくなります。

暗記のための効果的な学習環境

効率的に暗記するためには、適切な学習環境を整えることも重要です。以下に効果的な学習環境の作り方を紹介します。

静かで集中できる場所を選ぶ

暗記には静かで落ち着いた場所が適しています。騒々しい場所や人が多い場所では、集中力が散漫になります。自宅の部屋や図書館など、静かで集中できる場所を選びましょう。

机や椅子を整える

快適な学習環境を作るために、机や椅子の配置にも注意しましょう。机の上は整理整頓されており、必要な教材やノートがすぐに手に取れるように整理しておくことが大切です。また、姿勢が正しい姿勢で座れる椅子を選び、背筋を伸ばして学習することも効果的です。

学習時間を確保する

暗記には継続的な学習が必要です。学習時間を確保し、一定のペースで学習を進めることが大切です。自分の都合や生活リズムに合わせて、学習時間を設定しましょう。例えば、毎日の定期的な学習時間や、集中力の高い時間帯を活用すると効果的です。

集中力を高めるための方法を取り入れる

長時間の学習においては、集中力を持続させることも重要です。集中力を高めるためには、以下の方法を取り入れると良いでしょう。

タイムマネジメントを行う

学習時間を区切り、一定の時間ごとに休憩を挟むことで疲労を軽減し、集中力を保つことができます。ポモドーロテクニックなどの時間管理法を活用しましょう。
集中力を高める音楽を聴く:集中力を高めるためのBGMや音楽を活用することがあります。自分に合った音楽を選び、学習中に流すことで集中力を高める効果があります。

適度な運動やストレッチを行う

学習の合間に軽い運動やストレッチを行うことで、血液の循環が良くなり脳への酸素供給が促進されます。これにより、集中力を高める効果があります。

学習目標を明確にする

暗記の効率を上げるためには、明確な学習目標を持つことが重要です。具体的な目標を立て、それに向かって学習を進めることで、モチベーションが高まります。

これらの学習環境を整えることで、暗記の効率を上げることができます。ただし、人によって適した学習環境は異なる場合がありますので、自分に合った環境を見つけることが大切です。また、定期的な休憩やリラックスする時間も取り入れながら、バランスの取れた学習スケジュールを組むことも忘れずに行いましょう。

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